狩猟とは (第七話)

狩猟の世界今昔 U


その昔 カンジキを着けてのラッセルで気の遠く成る
ような 難行苦行を経ての猟活動も よくあった。
現在地球規模の温暖化影響も有り 又駆動力を
多用した 現代ハンティングの訪れによって そんな
想い出多い猟野風景は とんと見掛けなくなって
しまったようだ。


幾つかの峠越えで辿り着いた狩山で 思いがけず
多くの猟果に恵まれ 其の処理を済ませ西の頂きを
見上げると 太陽は其の影へと姿を消そうとしている
といった事も少なくない 月明り頼りの帰路となり
雪に埋もれ 衣服を凍らせながらの下山も有った!
其のルートは 雪原に一本の溝となり 行き先を
見失う事は無い。
フラ 々 と成り 麓へと辿り着くといった事も幾度か
味わった時代 そんな出来事も 今は懐かしく思い
起させる 遠い出来事と成った。


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牝鹿


山々を覆う積雪に 次々と新しい雪が積み重ねられると 野生動物にとって一段と深刻な事態と成る 体力の無い
牝や若鹿は 急な山肌を 下へ々と追いやられ・・・・・終には谷底へと落ちる。
鹿は 一度緩み解け表面が硬く深い雪を嫌う 人間がカンジキを履き歩き回れる原野を 細い足で踏み抜くと
次の一歩に 挙げる足が抜けなくなってしまい 餌の多い山肌上部へと向かう事が叶わなくなり 其の都度
谷底へと 押し戻されてしまう。
そして其の状態が長期にわたると谷沿いに生える
苔や 身近の木肌を剥ぎ 食べ尽くし ついには
餓死にと至る。


大雪の厳冬期を経て 若葉の芽吹く頃 岩魚を
狙いに向かった渓で 其の現場へ出会う事が
有った! 累々と重なる白骨は 谷床を真っ白に
埋め尽くし 其の場所へと垂れ下がる 一本の
蔓の中程は 其処へ届いた鹿が 奪い合い
齧ったのだろう 歯型が残り 細く 々 成って
風に揺れる。

幾たびかの出水により 其の白い谷底も 何事も
無かったかのように 元の穏かな流れへと変化を
遂げ 全てを覆い隠し サラサラと 静かに流れ
落ちる 其れが自然の移ろいなのだと 云わん
ばかりに。

其の極度に厳しい 生息環境の中にでも 時折
尾根筋に張り出す 障子(セッピ)の 下などに
こんな処でと思わせる場所に立ち尽くす牡鹿の
姿を見つけて驚く事がある! 何のためと思うと
同時に 其の姿に 牡鹿の力強さを 改めて
思い知らされる出来事である。

                       OOZEKI

雪の鈴鹿山系